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複数台導入のコスト最適化|分院展開時の機器戦略

複数院を展開する際の機器導入戦略。統一化、ボリューム購入、メンテナンス効率を踏まえた考え方を紹介します。

クリニック経営の成功の先にしばしば立ちはだかる課題が、分院展開です。「本院が順調に回っているので、2号店を出したい」という判断は、経営の新しい段階を意味します。しかし同時に、「機器をどう配置するか」という新しい問題を生み出すのです。

複数の拠点で医療機器を運用することは、単純に「個別購買を複数繰り返すこと」ではなく、全体最適を考えた戦略が求められます。この記事では、分院展開時の機器戦略について、実務的な視点からお話しします。

複数院展開の機器戦略における大原則

分院展開に際して、機器導入で失敗するクリニックの多くは、「各院独立採算」という思考のまま機器導入を進めてしまいます。つまり、各院が「自分たちに必要な機器」を個別に購入し、各院のマージンで回収しようとするのです。

しかし、これは経営上の「最適解」ではありません。より賢い思考方式は、「複数院全体で見た時に、どの機器をどこに配置すれば、トータルコストが最小になるか」という視点を持つことなのです。

例えば、高額な機器Aと、中程度の価格の機器Bがあった場合、「本院に機器A、2号店に機器B」という配置をするのではなく、「本院と2号店で機器Aを共有し、その代わり別の機器を導入する」といった選択肢も生まれるのです。

この戦略的思考が、複数院展開時のコスト最適化の出発点になります。

標準化と統一化のメリット

複数院展開において、機種の「統一化」は非常に重要な意思決定です。

統一化のメリットは、第一に「スタッフの教育・運用コストの削減」です。全ての院で同じ機種を使用していれば、スタッフ育成の際に「複数の機器の操作方法を覚える」という負担が減ります。また、本院のベテランスタッフが2号店に応援に入る時も、機器の操作方法がすでに理解されているため、スムーズな対応が可能になるのです。

第二に、「メンテナンスと部品管理の効率化」があります。同じ機種が複数ある場合、メンテナンス会社との交渉も容易になり、ボリュームディスカウントを獲得できる可能性が高まります。部品や消耗品も、複数院分をまとめて管理できるため、各院で個別に保有するより、トータルコストが削減できるのです。

第三に、「中古機器の流動性」という視点があります。将来的に機器の更新を考えた時、統一化されている機器の方が、中古市場で売却しやすいのです。複数台同一機種がまとめて売却される場合、単一台の売却より買い手を見つけやすく、価格交渉も容易になります。

しかし同時に、統一化には代償もあります。院ごとのニーズに完全には対応できない可能性があります。例えば、本院は毛髪除去施術が主力だが、2号店は皮膚再生が主力、という場合、統一化によってどちらかの院が「本来なら導入したい機器」を導入できなくなるかもしれないのです。

重要なのは、「完全な統一」と「完全な個別化」のどちらでもなく、「共通部分は統一し、院ごとの特色は別途対応する」という柔軟な戦略を取ることなのです。

ボリューム購買による交渉戦略

複数院展開の最大の利点のひとつが、「ボリュームを背景にした交渉力」です。

中古機器の購入において、「2台同時購入」「今後も継続的に機器を購入する可能性がある」という情報は、販売者側にとって非常に価値がある情報です。販売者は、単一クリニックよりも、複数院展開予定のクリニックに対して、より優遇的な条件を提示することが多いのです。

具体的な交渉ポイントとしては、以下が挙げられます。

複数台同時購入による価格引き。2台、3台をまとめて購入する場合、1台当たりの価格が低下することが多いです。業者側も、販売手続きのコスト削減や在庫圧縮の利益を得られるためです。

メンテナンス契約のセット化。複数台の機器を導入する際、メンテナンス契約も合わせて交渉することで、月額費用を低減できる可能性があります。複数台の管理を一括で行うため、業者側のコスト削減も進むためです。

配送・設置費用の最適化。複数台を異なる拠点に配送する場合、配送業者を統一することで、1台当たりの配送費用を削減できます。同じドライバーが複数の拠点を回ることで、効率化が実現するためです。

将来的な買い替え時の優遇条件約束。分院展開予定を明示することで、「今後も当社を通じて機器を購入してくれるであろう」という期待値が生まれ、長期的な優遇条件を引き出しやすくなります。

機器の配置と共有の戦略

複数院がある場合、機器をどこに配置するかという判断も重要です。

高額な機器は、患者数の多い院に集中配置するというのが基本的な考え方です。例えば、導入コストが高い機器については、本院に配置し、そこで多くの患者を処理することで、ROIを早期に達成するのです。

一方、2号店には、本院よりも「需要が確実にある、かつ導入コストが中程度の機器」を配置するのが効率的です。これにより、各院の収益性を最大化しながら、グループ全体のコスト効率も改善できます。

さらに進んだ戦略として、「機器の循環利用」という考え方もあります。例えば、新しい機器を本院に導入した場合、従来本院で使用していた機器を2号店に移し、その機器の残存寿命を活用する。その結果として、最も古い機器を除却する、というような循環です。

この方式であれば、常に「各院が最適な機器を運用している状態」が実現でき、かつ全体的な設備投資額も抑制できるのです。

メンテナンス契約と保証の一元化

複数院展開において、意外と見落とされるのが、メンテナンス契約の最適化です。

個別に契約する場合、各院がそれぞれ独立したメンテナンス契約を結ぶことになります。この場合、保証条件が院ごとに異なる可能性があり、管理が煩雑になります。また、月額費用の合計も、個別契約の方が割高になる傾向があります。

一方、複数院分をまとめた契約を結ぶ場合、メンテナンス業者側も効率化を進めやすく、より優遇的な条件を提示しやすくなります。さらに、複数台の機器を一元的に管理することで、「ある機器が故障した場合の対応」もスムーズになるのです。

重要なのは、契約内容を定期的に見直すことです。「3年前は個別契約が最適だったが、今はセット契約の方が安い」といった変化も起こり得るため、毎年、現在の最適な契約形態を検討する習慣をつけることが大切です。

人員配置と育成の効率化

複数院展開時、機器の運用を支えるのは「人」です。機器を統一化することで、人員の柔軟な配置が可能になります。

例えば、毛髪除去機器を複数院で統一している場合、本院で育成した高度な技術を持つオペレーターが2号店に応援に入る時、新たに機器の操作を覚え直す必要がありません。その結果として、人員の相互サポートが容易になり、クリニック全体の運用の柔軟性が高まるのです。

また、統一された機器であれば、新しいスタッフの教育コストも削減できます。「複数の機器について学ぶ」という負担が減るため、より早期に現場で活躍できるようになるのです。

将来の拡張性を見据えた選択

複数院展開を検討する段階では、「さらに3号店、4号店を出すかもしれない」という将来を想定した機器選択も重要です。

将来的な拡張性を確保するために、既成された機種を選択するという考え方は有効です。つまり、「将来も入手可能な機器」を最初から選んでおくことで、拡張時の機器調達がスムーズになるのです。

逆に、「最新型で、供給が不安定」な機器を導入した場合、2号店、3号店で「統一化したいのに、同じ型番が市場に存在しない」という悲劇が起こるかもしれません。

複数院展開は、クリニック経営の成長を示すマイルストーンですが、その過程において、機器戦略は経営効率を大きく左右する重要な決定事項なのです。

クリニックマッチの複数院サポート

クリニックマッチでは、複数院展開を予定されているクリニックに対して、「グループ全体を視野に入れた機器戦略」のコンサルティングを提供しています。各院のニーズを詳しくヒアリングした上で、全体最適な機器配置プランを提案させていただきます。

また、複数台の同時購買による交渉や、メンテナンス契約の一元化なども、あわせてサポートいたします。分院展開の際は、ぜひご相談ください。

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